第一章 古都で出会った少年
五年前の、それは蒸し暑い夏の日だった。
当時、神奈川県内の工業大学に在学していた僕は『失恋を癒すための日帰り独り旅』と称して鎌倉巡りをしていた。
失恋が鎌倉と結びつくあたりが若い男の発想らしくないが、僕はそういう地味な性分で、そこらは五年経った今でも変わっていない。
若い世代が年々早熟になっていく時代に、二十歳になっても恋愛経験は一切なし、もちろん童貞。
そんな僕の恋のお相手はサークル活動で知り合った短大生で、決して美人ではない、目立たないタイプの人だったが、それでも僕にとっては高嶺の花で、積極的なアプローチを試みるなんて、と思っていた。
だからといって、このまま終わるのも悲しすぎる。
毎年繰り返される寂しい青春を何とかしようと、大学の長い夏休みを前に、僕は大胆にも一世一代の賭けに出たのだが、それより先に我が身を省みるべきだったのだ。
初めての思い切った告白、しかしというか、当然の展開というべきか、彼女の返事はノーだった。
「ごめんなさい。来宮クンって、男の人ってカンジがしなくて……」
──そうなのだ、子供の頃からそうだった。
小学校の高学年になっても、公衆トイレに入ると「女の子はあっちだよ」と言われた。
美少女に見間違うほどの、中性的な美少年というわけではなく、年齢のわりに小柄で痩せの貧相な体型に、どちらかといえば女性的な優しい顔立ちのため、性別は女と判断されてしまう場面が多かったのである。
その悲劇は大学に入っても続いた。さすがに女に間違われることはなくなったが、男と意識されず、女子更衣室あたりに紛れ込んでいても、誰も気づかないようなタイプで、告白を受けた彼女が戸惑うのも無理はなかった。
しかも、自分に対する自信のなさから、顔を隠すのに都合のいい、前髪を長く下ろしたマッシュルームカット──絶滅寸前のヘアースタイル──を好み、そこに加えて、高校時分から落ちてきた視力を補うために、レンズの厚いメガネをかけた変てこなヤツ。
服装にも気を遣わず、チェック柄のくたびれたシャツとジーンズを愛用。こんな、野暮ったくてダサい部類に入る男など、女にモテるどころか相手にしてもらえるはずがない。
やはり、告白する前に反省すべきだったのだが、それはともかくとして、傷ついた心を抱えた僕は辛い想いを断ち切るために、中年女性のグループやら、慰安旅行の老人の団体などに混ざって、縁切り寺と呼ばれる寺院を幾つかまわった。この身にささやかな幸せが訪れるようにと、ありがたい神様を祭った神社へも、せっせと足を運んだ。
こうして気持ちにふん切りをつけたあと、帰路に着いた僕は鎌倉駅のホームで横浜方面に向かう列車を待っていた。
昼間は暑さが堪えたが、夕刻になって心地よい風が吹いてきた。ホームに落ちていた枯葉や紙屑がふわりと舞い上がり、いずこかへと飛んでゆく。
「……あの、すいません」
突然声をかけられて、振り返った僕の目に映ったのはジャージ姿の、おそらく高校生ではないかと思われる若い男だった。
十センチ以上背が高い相手を見上げながら、僕は「は、はい、何か?」と応じた。
少し長めに伸ばした髪に、端正な容貌の持ち主は笑みを浮かべながら、暗記カードのようなものを差し出した。
「この漢字、読み方わかります?」
受験生なのかな。
不可解な印象を受けながらも、僕はそのカードを覗き込んだ。
「フンショク、でいいと思いますけど」
「ありがとう、ボクもそうじゃないかと思ってました」
わかってたんなら、何のためにわざわざ質問してきたんだろう? 話しかけるきっかけとして暗記カードを使うなんて、奇妙なヤツだ。
改めて見ると、アイドルグループのメンバーでも通用しそうな美形は「少しお話ししてもいいですか?」と訊いた。
宗教の勧誘、それともマルチ商法?
まさか高校生がそんな活動をするはずはないだろうと思う一方で、安易に警戒を緩めるわけにもいかずに僕は躊躇した。
「これから川崎まで帰るのに話し相手が欲しかったんですよ、御一緒しても構わないでしょう?」
彼はまたまたニッコリとしたが、それはどういうわけか、営業スマイルといった感じの、冷ややかな笑顔でもあった。
「は、はあ……」
口ベタゆえに初対面の人とスラスラ会話できるとは思えないが拒む理由もない、というか、拒めない性格の僕はうなずいた。
「鎌倉には観光で来たんですか」
「ええ、まあ」
「ボクは部活の試合があって」
スポーツバッグを肩から提げているあたり、何かしらの運動部に所属しているらしい彼はそれから名前を訊いてきた。
「来宮高貴(きのみや こうき)です」
「大学生? 下宿してるの?」
「はあ」
年下の高校生にイニシアティブを取られてしまった形で、僕は質問に答え続けた。
相手は『風祭蓮(かざまつり れん)』と名乗った。
どこかで聞いたことのある、まるでヒーロー物の主人公のような名前に仰天したが、彼ほどの容姿ならばおかしくない、むしろ似合っている。
「でも、親が離婚したら、この苗字じゃなくなっちゃうんですよね。なかなかカッコいいし、けっこう気に入ってたんだけど」
「離婚、って……」
そこへ列車が到着して、車内に乗り込んだ二人は並んで腰掛け、さらに『蓮』の身の上話は続けられた。
両親は以前から不仲で、離婚が取り沙汰されていること。
母親は再婚で、彼と今の父とは血のつながりがなく、幼い頃は虐待されていたこと。
父はアル中で、まともに仕事もせずにブラブラと過ごしていること。
妹には精神障害があり、母がつきっきりで面倒をみていること。
昨年、交通事故で亡くなった祖父が多額の借金を残していて、暴力団風の男たちが自宅へ押しかけてくること。
この世の、ありとあらゆる不幸を背負ったかに思える彼はそれらを淡々と語り、次々に聞かされる悲惨な話に、僕は息を呑んだ。
高校生の身で、こんなにも辛い目に遭っている人がいるなんて、それでも境遇に負けずに頑張っているなんて。
失恋したぐらいで不幸がっている自分が情けなくなってきた。
「まあ、生きていればひとつぐらいイイコトがあるかな、なんて思って」
「そ……そうですね」
こんな時に何と言って慰めていいのかわからず、うつむいてしまった僕はリュックの中にお守りが入っているのを思い出した。
鎌倉巡りをした時に有名な神社で買い求めた、開運のご利益があるとされている、白い生地でできたお守りで、神社の名前入りの紙袋を取り出した僕は『蓮』の前に差し出した。
「何ですか?」
「さっき買った開運のお守りです」
ハッと目を見張った彼は訝しげな眼差しを僕に向けた。
「今日、僕は思うところがあって鎌倉に来ました。で、これを買ったけど、僕よりキミが持っている方がいいと思って。よかったら受け取ってください」
その瞬間、『蓮』の顔がなぜか悲痛に歪んで見えた。
「……も、貰っちゃっていいんですか」
「ええ、どうぞ。きっと、ふたつ以上イイコトがありますよ」
ありがとうと礼を述べたあと、彼は急にはしゃぎ出した。
「あっ、そうだ。せっかく友達になったんだし、また会いたいな。ケータイの番号、教えてもらえませんか」
これではまるでナンパだ。苦笑いしながら僕はリュックの中をかき回したが、出掛ける時に所持しなかったことに気づき、電話番号そのものもよくおぼえていないと謝った。
「じゃあ、ボクの方を教えるから、帰ったらかけてください」
彼はスポーツバッグから自分のケータイを取り出して開くと、メモ用紙に番号を書き記したものを手渡してきた。
やがて列車は横浜駅へと到着した。ここで乗り換えるために下車する僕に向かって『蓮』は何度も念を押した。
「絶対に、忘れずにかけてくださいよ。待ってますから」
発車する車両を見送っていると、窓辺に顔を寄せた彼が何度も手を振る様はやがて見えなくなった。
やれやれ、この展開はいったい何だったんだろうと、渡されたメモ用紙に目をやったその時、夕刻のラッシュの人波に飲み込まれた僕の身体はもみくちゃになり、小さな紙切れは折からの風に吹かれ、この手を離れて舞い上がった。
「あっ!」
白い、小さな姿はあっという間に目の前から消え失せ、僕は呆然となってその場に立ち尽くした。
こうして『風祭蓮』と名乗る高校生と僕を結ぶ、たった一本の糸はぷっつりと途切れてしまった。だが……
◆ ◆ ◆
「えー、今年で我が社も創立七周年を迎えました。この大革新となる年に、君たち二十名の新入社員を迎えたことは大変有意義でありまして……」
入社式にて延々と続く社長の挨拶を聞きながら、僕はげんなりとしていた。
理由はひとつ。
今日から始まる新入社員研修における教育担当に任命されたからで、引っ込み思案な性格の僕にしてみれば、新人たちを相手に二ヶ月近くも研修を行うなど、もってのほか。昨年十月に通達を受けた日は鳩尾の辺りが痛くなって早退したほどだ。
僕が勤務する株式会社システムソリューションズ、通称FSSは国内コンピュータメーカー最大手であるFBLが百パーセント出資した子会社として設立され、横浜市中区に自社ビルを構えてその規模を年々拡大、発展し続けてきた。
今年は社長の言う『大革新』に則り、例年十名前後だった新入社員の採用を一気に二十名まで増やしたが、今回の採用増加に伴い、四月から五月にかけて行われる新入社員の研修にも力を入れる方針となった。
親会社であるFBL株式会社で開発されたコンピュータの周辺機器に搭載するプログラムの作成、いわゆるソフトウェア開発を主な業務とするこの会社、新卒で採用する人物は大学や専門学校等でプログラミングを学んできた者ということになる。かくいう僕も大学では情報処理が専門だった。
ところが景気も回復して学生の売り手市場となった折、二十名もの人数を採用するとなると、全員が即戦力として使えるわけではなく、また、人間性などを重視した結果、中には専門外から採用した者もいる。
そうなると彼らを配属前までに一端の社会人として育て上げるために、教育のプロフェッショナル、とまではいかなくても、社員教育に通じた者が必要になってくる。
そこで、これまでは先輩社員の中から選んでいた研修期間中のみの臨時講師に代わり、社員教育担当の専任を置くことに決定。開発部の社員の中で白羽の矢が当たったのは僕を含めて二人だが、第一開発課に配属されて三年間、業務一筋の自分がなぜ教育担当に選ばれたのか、まったくわからなかった。
人前で話すのは苦手、この仕事を選んだのも機械が相手だからであって、そんな男がよりにもよって、社員教育を行うとは。
これから始まる毎日を思って、またしても胃が痛くなるのを感じながら、緊張した面持ちで入社式に臨む新入社員たちの様子を窺っていた僕はギクリとして、そこから目が離せなくなってしまった。
僕の視線の先──チャコールグレイのスーツを着て臙脂のネクタイを締めた若者に、鎌倉で出会った、あの『蓮』の面影を見つけたのだ。そっくりもそっくり、まさに生き写しだった。
あの時高校生であれば、今年大学を卒業して入社という年齢にぴったり当てはまることも同一人物の可能性を感じる。
長身ですらりとした体型、切れ長の目に高い鼻筋と、輝くばかりの美形ぶりは同期の中でも群を抜いていて、少し長めに伸ばした髪は変わっていないが、黒から鳶色への変化は大学生、そして社会人へと進んだ証か。
五年の時を経て、それなりに成長した彼はかつての面影を残しながらも、大人の男の色気を漂わせ始めていた。
あの日の約束は決して忘れたわけではなかった。
メモ用紙を失くしてしまったことはこの五年間、僕を時折苦しめてはいたが、その一方で、仕方がない、彼とは縁がなかったのだとあきらめる気持ちもあった。
お守りのご利益で、奇妙なキノコ頭をした年上の大学生なんかよりも、もっといい友達ができたかもしれないじゃないか。いや、それよりも彼ほどの男ぶりなら、可愛い彼女がいて当たり前だ。僕のことはとっくに忘れているだろう、そんなふうに考えたりもした。
それでもあのあと、何度か鎌倉に足を運んだが、彼に再会した試しは一度もなかったのに、こんな偶然があるものなのか。次第に激しくなる鼓動、緊張感が僕を襲った。
そうこうするうちに、総務部長の口から新人たちの名前が読み上げられた。
「呼ばれた者は立ち上がって、大きな声で返事をしなさい。では社員番号順に呼びます、不破隆(ふわ たかし)君」
「はいっ!」
「興和義光(こうわ よしみつ)君」
「はい!」
意気揚々とした若者たちが次々に立ち上がる。やがて彼の番になった。
「成海基君」
えっ、『ナルミモトイ』?
そんな、『カザマツリレン』じゃない……
「……はい」
先に呼ばれた同期の仲間たちの、元気のいい返事とはまったく違う。感情のこもっていない、抑揚のない声が響いたが、その声が聞き覚えのあるものか、ないものなのかは、僕にはわからなかった。
今、あの男はたしかに成海基と呼ばれていた。それではけっきょく別人、他人の空似なのか。
頭の中が大混乱を起こしている。気分を落ち着かせようと、僕はスラックスの上から太股を両手でギュッとつかんだ。
再び着席した彼・成海基は冷たい表情のまま壇上のお偉方をねめつけており、そんな様子に総務部長が不審そうな眼差しを向けていたが無理もない。
大人びたというよりは不遜な態度、新人らしい初々しさのない、ふてくされたような面持ちは見守る僕を別の不安に陥れた。
その正体が『風祭蓮』ではなかったのはともかくとして、いきなり管理職のチェックを受けるような態度をとるとは。教育する立場としてはこれから先が思いやられる。
式典が一通り終了して社長らが引き揚げると、集合写真の記念撮影を終えた新入社員に教育担当者が紹介される運びとなり、僕たちは彼らの前にずらずらと並んだ。
「我々四名がこれから二ヶ月の間、君たちの研修を担当する総務部業務課の教育プロジェクトチームのメインメンバーです。私は業務課課長の大塚です、よろしく」
開発部第二開発課から抜擢された大塚課長がマイクを取って紹介を始めた。
「それでは私の隣から。入社七年目に入るチームリーダーの富山聡(とやま さとし)君です。頼りになる男ですから、何でも訊いてやってください」
元第四開発課の富山さんはこの子会社立ち上げの際に新卒として初めて採用された、いわば一期生であり、研修の講師も何度か務めたベテランで、その経験を生かしてもらおうと抜擢。にこやかに会釈をする様子は威風堂々として、さすがの貫禄だ。
「富山君の横が入社四年目の森下友美さん。三年間総務課の仕事をしていたので、主にビジネスマナーなどの担当です。君たちの事務関係の手続きも彼女に任せますので、何かありましたら遠慮なく相談するように」
水色のスーツ姿の森下さんは僕と同期だ。華やかな総務女性軍団の中では地味な存在だけど、聡明で控え目なところに好感が持てると、やはり同期で、僕とは一番仲のいい椎名と噂し合ったことがある。
が、だからといって、僕は森下さんを彼女にしたいと思ったわけではない。最近、彼氏ができたらしいという噂を聞いていたせいもあるし、そこまでする気力もなかった。
社員の大半が男性という会社に勤務している者の宿命として、ナンパ、合コン、お見合いパーティーに至るまで、自分から積極的に動かなければ女性との出会いはない。
しかしながら、五年前の失恋から、すっかり臆病になってしまった僕は未だに恋人のいない、寂しい青春期間記録を更新し続けていたのだ。
大塚課長の部下紹介、いよいよ僕の番だ。
「同じく入社四年目に突入の来宮高貴君です。主に言語の解説やプログラミング基礎、実習などを担当してもらいます」
おずおずと頭を下げると、失笑が漏れた。
『何だ、あの髪型。今時あんなのあり?』
『ダッせえ、マジであれが先輩かよ』
そんな声が聞こえてきそうで、冷や汗が背筋をたらたらと伝う。
この五年間、僕の髪はマッシュルームのまま、分厚いメガネもそのままで、ダサい男から少しも進歩しておらず、五年前に出会った者が気づかないはずはない。
だが、成海がこちらを見つめる表情には何の驚きもなく冷ややかで、やはり彼は別人なのだと確信すると、僕はホッとしたような、それでいてガッカリしたような、奇妙な気分になった。
今後の予定の確認をしたあと、教育プロジェクトチームは新人たちと一緒に会場を片づけてから解散、十分間の休憩を挟んで大塚課長と森下さんが全員を引き連れ、社内見学をしてまわることになっていた。
長い緊張からようやく解放された新入社員たちはパイプ椅子を移動させながらめいめいにおしゃべりを始めたが、そのうちの何人かが同じく椅子を片づけていた僕に向かって話しかけてきた。
「教育担当の方って、最初は他の仕事をしていたんでしょう」
「え、ま、まあ」
「じゃあ、来宮さんは元々どこの課にいたんですか?」
「僕は第一開発課で、ハードディスク関係をやってて……」
おどおどと答える僕は彼らにとって、尊敬すべき先輩でも教育担当者でもなく、面白いおもちゃでしかないのだろう、ふざけた質問を次々に投げかけてくる。
「マニアックな雰囲気がしますけど、アキバ系ですかって訊かれませんか?」
「そういう質問を受けたこともありますけど、残念ながら該当しなくて」
僕自身は秋葉原を徘徊するわけでもなく、怪しい店に出入りしてもいないのに、そうと見做される場面は多々あった。
アキバ系疑惑を否認された新人たちはなおもしつこく話しかけた。
「髪型、すっごくオシャレですね」
「今時やってる人は誰もいませんよ、ある意味、最先端じゃないっスか」
研修の準備期間中に富山さんが「面接したお偉方の話じゃ、今度の新人たちはなかなか『やんちゃ』らしいよ。オレらもナメられないようにしないと」と話していたが、まさか実際の講義が始まる前から、ここまでナメられるとは思わなかった。
それでも、何も言い返せない僕は曖昧にうなずくだけだった。
「わかってないなぁ、おまえら」
そこへ割り込んできたのは成海で、問題の人物の登場に僕の緊張が高まる。
彼は勿体をつけるように、奇妙な言葉を口にした。
「来宮さんはキノコなんだから、その髪型でいいんだよ」
キノミヤのキノと、コウキのコを合わせてキノコ。キノコだからマッシュルームカット。そうとわかると、新人たちはいっせいに大笑いを始めた。
「キノコか。なるほど」
「これからキノコ先輩って呼ばせてもらおうかな、それとも普通にキノコさんの方がいいですか?」
ますますナメられる結果になって途方に暮れる僕は見下すような、冷たい視線が突き刺さるのを感じて、視線の主に目をやった。
腰の引けた、気の弱そうな教育担当は成海にとって、余程ムカつく存在だというのか。だが、彼とは出会ったばかり。そこまで嫌われるものなのか。
僕の胸は鉛を飲み込んだかのごとく重苦しくなり、まるで逃げるかように、その場をあとにした。
……②に続く