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オリジナルBL小説をお披露目しちゃいます

KARISOME LONELY ONE ③

    第三章  ほろにがレモン
 小田急線で新宿まで移動し、向かった先はジャス・バーと呼ばれる部類の店らしい。
 重い扉を開けて、ジャズの流れる薄暗いカウンターにあのミス・カフェオレの姿を見つけた俺は仰天した。
 雨宮との約束が出来上がっていたというのか。そんなバカな、信じられない。
「一万円、ゲットだぜ」
 思いもよらないこの展開、勝利のポーズをとる雨宮に、何も言い返すことができず呆然としていると、彼はさっさとカウンターに近づいて彼女の隣に腰掛け、次に俺を手招いて「クニちゃん、こっち」と反対側のストゥールを指した。
 俺はまるで夢遊病者のような、ふわふわとしたおぼつかない足取りで、言われるがままにそちらへと向かった。動揺のあまり、思考が止まっている。
 両脇から俺たちに挟まれる格好になったミス・カフェオレは「お疲れ様」と往なし、再びワイングラスを傾けた。
 雨宮がバーテンダーに水割りを頼んだので、同じものを注文したあと、この不測の事態に対して、何と切り出してやろうかと言葉を探してみたが思いつかない。
 いきなり水割りをカラにした雨宮はいたずらっぽい笑顔を向けた。
「それじゃあ、改めて紹介といきますか。こちらの正式なお名前は湖西遥(こにし はるか)さん。高校時代のダチの姉さん」
「ダチの、って、それじゃあ……」
 またしても俺は呆気にとられてしまった。ナンパに成功したのではない、ミス・カフェオレこと、湖西遥さんと雨宮は以前からの顔見知りだったのだ。
「いやー、わりぃ。遥さんと知り合いだってバレたら、笠井さんが紹介しろって言い出しそうでさ。それってウザイから、店の中では他人のフリをしていたんだ」
 その気持ちはわからないでもないが、賭けをするなどと持ちかけて、俺をかついでいたのかと思うと無性に腹が立ってきた。
「そんな恐い顔しないでくれよ。クニちゃんが遥さんのことを気に入ったみたいだから、笠井さんたちには内緒で会わせてあげようと思って」
 今度は俺と彼女の間を取り持とうという胆なのか。ヤツの感覚にはさっぱりついていけない。
「それはどうもご親切に。でも、そういう事情だとわかったからにはだ、一万円は払わないからな」
「手数料は?」
「知るか」
 俺たちのやりとりを楽しそうに聞いていた遥さんは思いがけない発言をした。
「薫くんったら、話が逆よ。私の方が速水くんに会いたかったんだから。それで薫くんに『今度飲みに行きましょう、そのとき一緒に連れて来て』ってお願いしたの」
 速水くんに会いたかった──
 まさかの彼女の言葉に驚き、浮かれそうになる気分を何とか抑えて、俺は冷静を装いながら尋ねた。
「えっ、俺にですか? 何でまた」
「薫くんから連絡をもらったの。今度バイトに入ってきた大学生がマサシにそっくりだからって、それで今日、お店に行って……」
 マサシ? 今、彼女はそう言ったのか? 
 俺の不審の目を感じてか、遥さんは慌てて「ああ、えっと、ローズ&ローズのマーシーよ」と言い直した。
「こんなにそっくりだなんて、予想以上だったからビックリしたわ」
 またしてもマーシーだ。
 天国から地獄へと突き落とされた俺は「何かマズイことを言ってしまったのか?」といった表情の遥さんを凝視した。
「あの……立ち入ったことを訊くようですけど、マーシーと特別な関係なんですか? それとも単なるファン?」
 彼女がぽろりと漏らした「マサシ」という言葉、マーシーをマサシと呼ぶ間柄ならば前者の可能性が高い。
 別れた男が忘れられず、未練がましくも懐かしむといった思いが働いているのかもしれないが、後者なら俺を身代わりに仕立てた深雪と同類だ。
 どちらにしても、俺にとっては不愉快極まりない扱いだった。
「そ、そうなの、単なるファンよ。気にしないでね」
 気にしないでと言われても、古傷を無理やりこじ開けられ、そこに塩をなすられた気分の俺としては、はいそうですかと納得するわけにはいかない。
 ムッとしていると、雨宮が調子よく双方をとりなそうとした。
「遥さん、クニちゃんはマーシーに似てるって言われるのがイヤなんだって。今日の昼に初めて聞いたんスよ。それをそっちに伝えそびれちゃって……すいましぇ~ん」
 わびているのか、ふざけているのかわからない雨宮の言葉を聞いて、遥さんはますます申し訳なさそうにした。
「あら、そうだったの。私の方こそ失礼しました。気を悪くしたらごめんなさい」
「いえ、そんな」
 年上の女性に謝られて、俺は逆に恐縮してしまった。
「まあまあ、お近づきにもう一杯やろうよ。今夜はリッチなキャリアウーマンの奢りだからさ」
 雨宮はそう言い、続けて遥さんに「いいよね?」と念を押した。
「ええ。罪滅ぼしに何杯でも奢るわ」
「よっしゃ。クニちゃん、次は何飲む? タダ酒なんだから遠慮なくいこうぜ」
 調子のいいことばかり言いやがって、何が遠慮なくいこうぜ、だ。
 遥さんからのリクエストに応じたとはいえ、安易に俺と会わせる約束をした上に、タダ酒にありつくなんて、ダシにされた身としては彼を断罪せねば気が済まない。
 だが、遥さんの前で罵るわけにもいかず、俺はイライラを募らせた。
 これ以上マーシーネタを続ければ俺がキレると思ったのか、雨宮と遥さんはその話題を避け、当たり障りのない話をしていた。
 雨宮が放つ冗談を聞くたびに、遥さんの笑みがこぼれ、ウェーブがかかったセミロングの髪が揺れる。
 友達の姉である彼女とどうしてこんなにも懇意なのかと不思議に思えたが、二人の関係は姉弟以上のものには見えない。
 そもそもだ、遥さんが雨宮の彼女というような関係なら、わざわざ俺に紹介したりはしないだろう。
 マーシーファンにマーシーのコピーを近づけるなんて、ライバルを増やす愚かな行為じゃないか。もっとも、俺に会ってみたいと訴える彼女の機嫌をとるため、だったかもしれないけれど。
 ならば、俺にもチャンスはある。マーシーの身代わりから、速水邦彦を好きになってもらえる可能性はゼロじゃない。
 トイレに行くと言って雨宮が席を立った隙に、俺は遥さんに「今度、二人きりで会ってください」と持ちかけた。
「薫くん抜きで、ってこと?」
「ええ。それもマーシーのコピーじゃなくて、速水邦彦として。ダメですか?」
 口ベタな俺としては、かなり思い切った発言だったが、遥さんはニッコリ笑って「いいわ」と答えた。
「ホントに? ホントにオッケーですか?」
 俺と遥さんがメアドを交換し終えたところに、雨宮が戻ってきた。
 遥さんと秘密の約束をした嬉しさと、それを雨宮に隠している後ろめたさから、俺はたいして飲めもしないアルコールをたて続けに飲んだ。
 三人の中で一番強いのは遥さんで、いくら飲んでもケロリとしている。
 店を出る頃には俺も雨宮もヘロヘロで、男二人は女性である遥さんに「二人ともホントに大丈夫? ちゃんと帰れる?」などと心配されるという情けない状態のまま、駅へと向かった。
    ◆    ◆    ◆
 遥さんが先に経堂で降り、俺たちは最寄りの千歳船橋で降りたあと、帰路に着いた。
 歩いているうちに、俺の方はそれでも酔いが醒めてきたが、雨宮の身体はまだふらふらとして、おぼつかない足取りだ。
「クニちゃん、もう一軒行こ。この近くに居酒屋があるからさ……」
 さんざん飲んだくせに、そのせいでふらふら状態のくせに、雨宮は性懲りもなくそんなことを言い出した。
 呆れた俺はつい声を荒げた。
「何言ってんだよ。そんな金、どこにあるっていうんだ。第一、これ以上飲んだら二日酔いになるのは目に見えてる。明日起きれなくなるぞ」
「だってさぁ、せっかくいい気分なのに、このまま帰りたくないんだよ。ねえ、もっと飲もう」
 雨宮は俺の腕をギュッとつかんだ。痩せのくせに妙に力が強くて、とてもじゃないけど振りほどけそうにはない。
「困ったヤツだな」
 そこで俺は折衷案を出した。
 居酒屋で飲むのではなく、コンビニで酒を買って、そっちの部屋へ行こうと提案すると、雨宮は素直に頷いた。
 とりあえず自宅へぶち込んでしまえばこっちのもの。
 さっさと寝かせて帰ろうと、俺は雨宮のメチャクチャな説明を辛抱強く聞きながら、彼の住居を探した。
 ウィークリーマンションの部類なのだろうか、簡素な造りの建物に到着すると、雨宮はあちこちのポケットを探って、ようやく鍵を取り出した。
「どうぞ入って。汚いところだけど」
 三和土に脱ぎ散らかされた靴、ところ狭しと置かれたレジ袋、そこかしこに引っかけられている衣類に出しっぱなしの楽譜と、言われるまでもなく汚い部屋だ。
 辺りの物を四隅に押しやり、フローリングの床がようやく覗いたところで、そこに座り込んだ雨宮はさっそく缶チューハイを取り出して俺に勧めた。
「はい、それじゃあカンパーイ」
 上機嫌で飲み続ける彼をハラハラしながら見守る。
 いきなり吐いたりしないだろうな、などといった不安を感じていると雨宮は「何だよ、もっと飲めよ」と絡み、俺の口元に缶を押しつけようとした。
「わかった。自分で飲むから、手を離してくれよ」
 とんだ酔っ払いだ。こんなに酒癖が悪いとは思ってもみず、こいつに多量の酒を提供した遥さんが恨めしくなった。
『搾りたてレモン』と派手な文字で書かれた缶の中身を少し飲んでから、俺はふと思ったことを口にしてみた。
「……そうだ、遥さんって、高校時代の連れの姉さんって言ってたけど、出身地っていうか、地元はどこなの?」
「岡山だよ。あの人は東京の大学に進学するためにこっちの方に出てきて、そのまま就職したんだ」
 外資系の何とかって会社でバリバリ働いているらしいと彼は言ったが、その説明では遥さんがどんな仕事をしているのか、さっぱりわからなかった。
「それで、オレらは高校卒業したあと、ひと旗揚げるつもりで、遥さんを頼って上京して……」
「オレらって、それじゃあ、遥さんの弟にあたる、その友達もこっちにいるんだ」
 とたんに不機嫌な表情になった雨宮は「東京にはいるみたいだけど、どこで何してるのか、全然わかんない」と答えた。
「わかんないって、喧嘩でもして絶交したのか?」
「まあな」
「でもさ、弟クンは遥さんと一緒に住んでるんだろ、違うの?」
「最初から別々に暮らしてたよ」
「だけど、さすがに自分の姉さんとは行き来があるんだろ。今どうしているのか、遥さんからは聞かないのか」
「あの姉弟が何をどうしようが、そんなのどうでもいいじゃねえか」
 さらに不愉快そうに言い放ち、立て続けにチューハイをあおった雨宮はまたしてもしつこく絡んできた。
「クニちゃん、そんなに遥さんが気になるの?」
「べ、別にそういうつもりは」
 さっきの約束は口が裂けても言えない、そう思わせる雨宮の迫力にビビッてしまった俺は心にもない言い訳をした。
「笠井さんのマドンナにちょっかい出すなって牽制したくせに、しらじらしいよな」
「誤解だよ」
「それで、オレみたいなのが彼女の傍をウロチョロするの、気に入らないんだろ」
「そんなこと、一言も言ってないじゃないか。おまえは昔からの知り合いなんだから、あの人と親しくして当然だし」
「オレ抜きで会いたいって思ってる」
 そいつは──図星だ。
「だから違うって」
 俺は緊張しまくりながら、またしても言い逃れをした。
「会わせるんじゃなかった」
「えっ……?」
 ぽつりと呟いた、その言葉の真意はどこにあるのか。
 俺と遥さんの接近を不愉快に思っているという意味なのか。
 それも遥さんが俺に、ではなく、俺の気持ちが遥さんに向かうのを恐れているのか。
 わけがわからずにいると、しばらくこちらを睨んでいた雨宮は何を思ったか、再び俺の腕をつかんだ。
「なっ?」
 彼はいきなりキスをしてきた。
 缶チューハイに入っていたグレープフルーツの香りがして、唇が少し湿ったような、柔らかい感触に包まれる。
 あまりの突然の出来事に、しばしされるがままになっていた俺はやっと自分を取り戻すと「何するんだっ!」とわめきながら雨宮の身体を押し退けた。
 はずみで、体重の軽そうな彼は勢い余って後ろへひっくり返りそうになったが、両腕を支えに、何とか免れていた。
 その様子をねめつけると、
「男にキスするなんて、いったい何考えてんだよ! 冗談じゃ済まされないぞ」
 驚きの展開で興奮醒めやらぬ俺は次々に罵声を浴びせた。
 ヘタをすれば雨宮に怪我をさせていたかもしれないのに、頭に血が上っているため、そこまで気がまわらずにいる。
 そんな俺の姿を目にして雨宮は背中を丸め、恐縮のポーズをとった。
「ごめん、オレ……」
 その赤い唇から舌を出して「ちょっとふざけただけでした、ごめんなさーい」という答えが返ってくると思っていた。
 酔った挙句の遊び心というオチを予想しながらも、もしかしたらそうではない、別の理由を期待している自分に気づいて焦った俺はさらに、一方的にまくし立てた。
「どう言い訳するんだよ。まさか、女と別れたばかりで寂しいとか、しばらくヤッてないから欲求不満で、この際、男でもいいとか言うんじゃないだろうな」
 思いつく限りの理由を並べてみたが、雨宮は首を横に振って否定した。
「そんなんじゃない」
「それじゃあ、いったい……」
 女と別れて云々などと思わず口走ってしまったが、それらの理由の可能性はまずないと断言していい。
 三人のファンに囲まれた昼間の様子を見る限り、本人さえその気になれば、女なんていくらでも手に入る状況にあるのだ。
 バンドなんぞをやってる連中は人一倍女好きな上に、ファンがいくらでも寄って来るから、相手をとっかえひっかえというのが俺の認識だ。
 もちろん、そんな連中ばかりじゃなくて、純粋に音楽を愛するヤツだっていっぱいいるだろうから、俺の認識は事実誤認、極端な考えだとはいえ、その説を信じている人はたくさんいると思う。
 要は雨宮が女に不自由しているとは思えないと言いたいのだ。それなのにこんな、思い余ったような真似をするということはつまり……
「おまえ、もしかしてゲイ?」
 訊きたいと思いながらも訊けずにいたことをとうとう口にしてしまった。
 そんな俺の問いかけに、ただでさえ青白い顔をした雨宮の顔色はますます青くなり、おろおろとした様子を見せた。
「俺のこと、そういう意識を持って見ていたわけ?」
「それは、その」
 図星だったのか、目を泳がせる彼のうろたえぶりを見て、俺は反対に冷静さを取り戻してきた。
 これまで雨宮が俺に向けていた視線はマーシーに似ていることへの好奇心から始まって、けっこう気の合うバイト仲間、さらに発展して友達、その程度のものと思っていたが、それだけではなかった。
 俺はそっちの趣味がある雨宮のおめがねにかなったというわけだ。見た目も中性的で男を相手にしていても違和感のない彼ならば考えられないこともない。
 バイトに入ってこの方、雨宮のペースに巻き込まれ、振り回されていた感があるが、ここにきて形勢逆転。今、主導権は俺にあるといっていい。
「何でそういう指向に走ったのか知らないけれど」
 冷酷な口調で言い切ると、俺は雨宮を見据えた。
「俺はゲイじゃないから」
「わかってるよ」
 彼には残酷に聞こえただろう、俺のセリフを遮ると、力なく答えた。
「わかってる。だけど……」
 うつむいていた雨宮が上目遣いに俺を見る、その視線になぜかドキリとする。
「悪かったよ。もうこんなことしないから、友達でいてくれよ。バイト辞めるとか、絶対に言わないで」
 そこまでするつもりはなかったのだが、彼の悲痛な懇願ぶりを目にしたせいか、俺の中の残虐な部分が台頭してきた。
「さあな。バイトの最中に熱い視線を向けられたんじゃ、仕事にならないけど」
「だったら、それなら」
 雨宮は必死で言い訳を繰り返した。
「オレ、夜は入らないから。目障りにならないようにするから辞めないで、お願い」
 さらに冷たいセリフをぶつけようとした俺はそこで思いとどまった。これ以上雨宮を虐めてどうするのだ。彼は俺に対して純粋に好意を抱いただけ、その気持ちに応える用意がないとはいえ、皮肉を言ったり、必要以上に責めたりしても仕方のないこと。
 そんなふうに納得すると、俺はゆっくりと立ち上がった。
「帰る……の?」
「ああ」
 しょぼくれた彼の身体はいつもよりも痩せて小さく見えた。
 同情などするつもりはなかったのに、俺の胸に微かな痛みが走った。
「……夜、入ったっていいよ」
「えっ?」
「給料が減ると困るんだろ。金のない辛さはお互い様だから」
 うつむき加減のまま、雨宮は弱々しい笑いを浮かべて「ありがとう」と答えた。
    ◆    ◆    ◆
 ところが翌日の夕刻、銀杏亭に雨宮の姿はなかった。
 笠井さんに聞くところによれば、昼間から欠勤していたらしい。風邪をひいたから休ませてくれと連絡があったという話だが、それを聞かされたとたんに、あんなにも冷たい態度をとらなければよかったと、後悔の念が押し寄せてきた。
 風邪をひいたというのはたまたま、本当のことかもしれないが、その一方で、昨日の夜の出来事が尾を引いているのではという疑念は晴れなかった。
 会わせる顔がないと、ぐずぐずしているうちに出勤しそびれたのかもしれないし、ひどい態度をとった俺の姿なんて見たくないと思ったのかもしれない。バイトを辞めないでというセリフからは矛盾しているけれど。
 ゲイ目線で見られちゃかなわない、いない方がせいせいする、そんなふうには思えなかった。
 むしろ、胸にぽっかりと穴が開いたような気分になった俺は仕事中、何度もヘマをやっては藤本さんたちに怒られた。
 俺はゲイじゃない、誓ってもいい。
 これまでつき合ってきたのはすべて本物の女だし、遥さんのことを考えるとウキウキとした気分になるのもたしかだ。早くメールを送って、デートの約束をとりつけようという考えに変わりはない。
 だけど、雨宮のいないこの寂しさは、この虚しさは何なのだろう。
 彼には親友に対するような親しみの感情を、そうだ、友情を抱いていただけのはずだった。
 それなのに今の俺は友達というより恋人を失った、そんな想いを感じている。
 雨宮が恋人? そんなバカな──
 でも、雨宮に会いたい──
                                ……④に続く